研究者情報
谷内 茂雄(Shigeo Yachi)
所属 | 生態学研究センター |
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職名 | 准教授 |
yachi [at] ecology.kyoto-u.ac.jp | |
Webページ | http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~yachi/ |
研究分類カテゴリ | 環境・資源についての研究 生物・生態についての研究 |
研究内容
私の専門は、理論生態学(theoretical ecology)です。
理論生態学は、理論的な考え方と数理モデルを使って、生物の人口変動や感染症の動態、異なる生物種間の共生・共進化、生物多様性と生態系の関係、生態系再生の方法、生態系と人間社会の相互作用など、地球の生態系に起こっているさまざまな生態現象の謎解きに挑戦します。
理論生態学では、広く生態に関わる現象や仮説を、数式を使ったモデルに表して解析します(モデリングといいます)。自分の理解したい現象を1つのモデルに捉えようと、あれこれ考えてモデルをつくり直しながら解析していく過程で、その現象の理解が格段に深まります。モデリングを通じて、現象のおこるメカニズム、現象を捉える新しい概念、現象が自然界でおこる条件について、新しい知見が得られるとたいへんうれしいものです。
私の研究テーマは、(1)地球生態系の成り立ちの研究、(2)流域管理および生物多様性・生態系の再生の研究、です。漠然としたテーマに思えるかもしれませんが、理論的には、(1)は複雑適応系(complex adaptive system:CAS)のダイナミクス、(2)は複雑適応系のマネジメントの研究という共通点があります。
(1)地球生態系の成り立ちの研究
約40億年前に地球に生命が誕生してから、さまざまな生態・進化プロセスを経て現在の地球生態系ができあがったわけですが、この地球生態系とは総体としてどういう世界なのか?いいかえると、生命という現象が地球という惑星に展開した地球型生命の世界とはどういうものなのか?それを探求することが現代の生態学の大きな目標の一つだと私は考えています。
(2)流域管理および生物多様性・生態系の再生の研究
このテーマは、地球環境問題をいい換えたものです。地球生態系に現生人類(新人・人間)が生まれてわずか10万年ですが、人間は地球生態系を劇的に変えてしまいました。いまや人間が地球という惑星で持続的に生きていくには、私たちの社会の仕組みを大きく変えていく必要があるといわれています。たとえば、Future Earth(フューチャー・アース)とよばれる国際的な地球環境研究の枠組みをはじめとして具体的な提案がされています。しかしどのようにして可能なのでしょうか?
地球環境問題という現代の大きな社会的課題に取り組む上で、私は流域スケールに着目してきました。流域(watershed)は、集水域(catchment area)ともよばれるように、水循環や物質循環の自然な空間単位のことです。ですから、流域は河川生態系や湖沼生態系を保全・再生する上で有効な管理単位(流域管理)と考えられてきました。しかし、生態系には多様な人が生活しているのが普通であり、生態系を管理する空間スケールが大きくなるほど、その中に含まれる人と地域社会の多様性は増してきます。たとえば、流域を流れる河川の上流と下流に位置する地域社会では、基盤となる生態系が大きく異なります。流域管理の主な困難のひとつは、流域スケールでの河川生態系再生のような流域管理課題と流域内の多様な地域社会が抱える課題の違い(ミスマッチ)から生まれてきます。このミスマッチをどのように克服するかは、実は流域管理に限らず、森林、海洋、そして地球に代表される大スケールの生態系管理に共通する大きな課題なのです。
私の研究内容は、その時々に関心や関わりを持った具体的な現象や課題の積み重ねなのですが、ひとつひとつの謎解きを通じて、自分が生まれて生きている地球生態系の全体像に迫っていきたいと考えています。
研究プロジェクト
研究カテゴリ | 研究プロジェクト名 | 研究実施期間 | URL |
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IPBES報告書分担執筆「The methodological assessment report on scenarios and models of biodiversity and ecosystem services.」Secretariat of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services, Bonn, Germany. 348 pages. | 2014年度〜2016年度 | URL |
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流域再生における人間社会と生態系の相互作用の解明 | 2013年度〜 | URL |
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生物多様性理論・モデリング研究センター(CBTM)human-nature interactions groupとの社会-生態システムのダイナミクスに関する研究交流 | 2015年度〜 | URL |
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生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態システムの健全性 | 2014年度〜2019年度 | URL |