京都大学FutureEarth研究推進ユニット

Future Earth Research promotion unit, Kyoto University

村落の発展にもつながる、ICT(岡本 正明さんの講演)
2017年3月21日 掲載

文:小野寺佑紀(レカポラ編集舎

パソコンやスマートフォンを使わない日ってありますか? ほとんどの人は毎日かならず利用するのではないでしょうか。

パソコンやスマートフォンなどの機器を使って情報を扱う技術のことを「ICT(アイシーティー)」といいます。Information and Communication Technologyの略です。日本語では「情報通信技術」と呼んでいます。ローカルとグローバルをつなぐことを目指し、さまざまな人が参加するFuture Earthの活動にとってもICTはたいへん重要なツールです。

京都大学東南アジア研究所の岡本正明さんは、地域の政治学が専門で、長年インドネシアで調査をおこなっています。最近注目しているのが、インドネシアで進むICT化だそうです。

投票や起業の申請もオンラインで

2000年と2016年でインターネットを利用した人の数を比較してみると、日本は1.4倍ですが、東南アジアの国々では23倍にもなっています。そしてその多くがパソコンよりもスマートフォンを利用しているとのこと。いつでもどこでもインターネットにアクセスできる状況が、ぐんぐんと広まっているのです。

インドネシアでは、人々の日常生活はもちろん、政治の場面でもICTが大いに利用されています。ジョコ・ウィドド大統領が選挙で勝てたのは、ICTを上手に使ったからだといわれているそうですし、県や市ではICTを利用した福利厚生、投票、競売などがおこなわれています。

なかでもバンドン市は、最先端のICTを利用した政治をおこなっていることで知られています。そのおかげで市役所では仕事の効率化が進みました。また、起業したい人がオンラインで手軽に申請できるしくみもつくられ、起業する人が増加したそうです。

自分たちで考えて、発展していく村

こうしたICT化は都市だけで進んでいるものかと思いきや、そうではなく地方や小さな村でもおきている、と岡本さんはいいます。その動きに影響しているのが2014年に施行された村落法です。これは、各村に1000万円を基金として割り当てるので自由に使ってよい、というものです。この基金をもとに村営の企業がはじまり、成功する例も続々と出てきているそうです。

ジャワ島のある村では、Game My Villageというアプリケーションが使われています。たとえば、学校の壁が壊れているのをみつけたら、それを写真にとってアプリケーションに送ります。アプリケーションは地図のようになっているので、どこの学校の壁がどのように壊れているか、一目瞭然です。そして、村の基金の使い方を決めるときにこのアプリケーションを参考にするのです。実際に修繕がおこなわれたら、その後のようすも写真に撮って記録します。基金の使い道もこのアプリケーションによって誰でも見ることができるわけです。

村落基金をもらうためには、村の境界線が定まっている必要があります。しかし、地方の村では、隣接する村との境界線があいまいなところがたくさんあります。そうした村では、村人が参加し、ドローンを使って地図づくりをおこなう取り組みも進んでいるそうです。

ICTには良い面と悪い面があるが、インドネシアでは今のところ良い面の方が目立っている印象だと岡本さんはおっしゃっていました。個人や村レベルでICTを活用し、さまざまな可能性をみつけること、そして継続することによって村や地域、ひいては国の発展につながるかもしれません。まちがった方向に進まないよう、教育も大事だとおっしゃっていました。


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