シンポジウムに行ってきました!
2017年3月17日 掲載
文:小野寺佑紀(レカポラ編集舎)
京都大学Future Earth研究推進ユニットの“はじめの一歩”
年の暮れも迫った2016年12月21日、京都大学でFuture Earthに関するシンポジウムが開かれるというので参加してきました。Future Earth・・・・・・ たまたまその単語は知っていて、内容もなんとなく把握はしていたのですが、きちんと話を聞くのははじめて。ちょっと緊張しつつ、シンポジウムが開催される時計台のホールへ向かう階段を上がっていったのです。
今回は、研究者ではない私がシンポジウムに参加して、見て聞いて感じたことを皆さんにお伝えしたいと思います。
どんなシンポジウムなの?
シンポジウムのタイトルは、「Future Earth国際シンポジウム 持続可能な地球社会にむけて ー京都からの挑戦—」。国際シンポジウムなので、受付では同時翻訳を聞くためのレシーバーが手渡されましたよ。
地球が相手のFuture Earth
Future Earthとは、持続可能な地球社会をめざす、国際的な組織連合のことです。2013年に立ち上げられ、2015年から本格的な活動をはじめました。
どんな組織が集っているかというと、世界遺産でおなじみのユネスコや、国連環境計画(UNEP)、世界気象機関(WMO)、国際科学会議(ICSU)などなど。それぞれだけでも大きな組織なのに、それがいくつも集まってFuture Earthというまとまりになっているそうです。
なぜそんな巨大な組織が必要になったのでしょうか? それは、相手が「地球」だからです。これまで長年、研究者やそれぞれの研究機関は、地球の気象や環境問題、動物や植物のこと、人間の暮らしなどを調べてきました。いろいろなことがわかりました。その結果わかったことのひとつが、今、私たち人類は「ほんとうに危機的な状況にある」ということだったのです。
地球上の生物は減りつづけています。大気中の二酸化炭素濃度も上昇が止まりません。極地方では氷の大地や氷河が小さくなり、地球のあちこちで気候が変わってきています。生命をおびやかされるのは野生生物だけではありません。私たち人類も例外ではないのです。今までやってきたように、これから先も暮らしていけるのか? そんなことが危ぶまれているのが現在の状況なのです。
では、どうすればいいのでしょう? 研究者たちは、これまでも「地球環境があぶないぞ」「なんとかしよう」と呼びかけてきましたが、結果的には問題は解決せず、わるくなっていく一方でした。研究者だけでは解決に結びつかない。これが、Future Earth発足のカギとなった考え方だそうです。
地球環境の問題を解決し、これからもずっと人類を含めさまざまな生物が暮らしていけるようにするには、研究者のほかに「政治に関わる人」や「産業に関わる人」、「教育に関わる人」、「報道に関わる人」そして「一般の市民や団体」が一緒になって取り組んでいく必要がある——。そして、それを推し進める組織として、Future Earthが立ち上がったのです。
京都大学に人材あり!
Future Earthとは何かという話を聞くと、ふむふむそういう理想を抱いているのね、それは大切なことだ・・・という気にはなります。しかし、重要なのは、では具体的には何をするの?というところでしょう。地球環境のためにみんなでがんばろう、というだけなら簡単ですもんね。
実は、Future Earthはまだ生まれて間もない組織であり、何ができるのかを模索している最中だといいます。Future Earthが具体的にどんなことをやりはじめているかについては、シンポジウムで講演された春日文子さんのお話を見てください。
その模索中のFuture Earthに対して声を上げたのが京都大学です。京都大学では伝統的に「ローカル」な研究が行われてきました。地元に密着し、その環境や動植物、人々の暮らしを対象にするのがローカルな研究です。これは、いわば地球規模で行われる「グローバル」な研究と対をなすものです。
Future Earthの理念は、一般の市民をふくむ色々な人が参加して地球の問題を解決していこうというものであり、これは、ローカルな視点をもってグローバルな問題を解決していこうと言い換えることもできます。そこで京都大学は、それならうちにはこんな人材がいますよ、という提案をしたわけです。そして、その人材をまとめたり情報発信をする場として、京都大学Future Earth研究推進ユニットが立ち上がりました。そのユニットの活動の“はじめの一歩”が今回の国際シンポジウムなのです。
シンポジウムでは、午前は、Future Earth国際事務局日本事務局長・春日文子さんのお話と、2つの基調講演がありました。午後は、ローカルな研究を行ってきた3人の研究者が発表されました。半分は同時通訳を介しながら、私が聞いてきた内容と印象をそれぞれについて紹介していきます。